7月19日 バイブス爆卍(まんじ)小学生になりたい 

バイブス爆卍(まんじ)小学生になりたい 。 

医療とAIなんちゃらかんちゃらの講義をサボって、国府強制収容所(設立当初は国府台牧場での強制労働者を収容するための施設であったが、19世紀終盤に奴隷解放宣言がなされたことによってその法的強制力を失い、現在は日本全土から集った出稼ぎ労働者が寝泊まりしている貧民窟となっている)で鉄格子越しの青空を見上げ、ふと頭に浮かんできたのが、この言葉だ。

 

バイブスの爆卍(まんじ)な小学生になりたいのだ。俺は。

 

二週間にわたる出席停止期間が明け、イザ、と講義に出席してみたものの、高校を1年で中退した俺にとって90分他人の話を一方的に聞かされるのは耐え難い苦痛であった。そもそも誰かに教わって勉強をするのは小学生以来であるから、その精神的苦痛たるや尋常ならざるものがあった。

 

そんなストレスに耐えながら、凛とした少女のような佇まいでフランス語文法の説明をする教授(白毫をお持ちで、夜は繁華街で悪の組織と戦うスーパー仏教ヒーローとして活動していらっしゃる)の話を聞いているフリをして手元のMacbook弥生時代の人々のファッションをひたすら画像検索している間、俺は己の人生についてずっと考えていた。

 

 

オラは何になりてェんだべサ。オメらは立派なお医者サマになるかもしれンが、オラにもなれるモンだろカ。イヤぁ、やっぱオラには荷が重うテ、かなわン。

 

 

 

などと故郷、東京都東久留米村(東京都内唯一の自治区。電話、インターネット等、一切の情報インフラが遮断されている。険しい山々に囲まれており村外との交通手段は徒歩以外に無い。一度東京都職員がヘリコプターによる接触を図ったところ、村民全員がヘリに対して石を投げてこれを撃退した。村民の平均年齢は68歳であり、最近は村の跡継ぎ問題に困っているらしい)の言葉で自由に思考していたが、一向にこの、自分は何になりたいのか?という問いに対する答えは見つからなかった。

そして、強制収容所の自室に帰ってきてひと休みしたところで、これを思いついたのだ。

 

 

 

下らない社会通念や価値観の一切をかき捨てて、俺はバイブス爆卍(まんじ)小学生になることを心から望んだ。

 

 

夏だから。

 

 

 

そして俺がバイブス爆卍(まんじ)小学生になりたいと思うのと同じように、バイブス爆卍(まんじ)小学生もまた俺になることを望んでいた。

 

両者の思いは成就し、二人は、真夏の蒸し暑い部屋の中でとてもエッチなセックスをした。

そうやってお互いの体を夢中で貪っているうちに、気づいたら俺はバイブス爆卍(まんじ)小学生とひとつになっていたのだ。

 

世の中のバカップルが行為の最中に気分を盛り上げるために言う「あンッ💓ひとつになってるね💓」などとは根本的に意味が違う。お互いの体が溶け合って、二人は文字通り一つになっていた。

 

俺はバイブス爆卍(まんじ)小学生で、バイブス爆卍(まんじ)小学生は俺なんだ。

 

夢が叶った、2021年、夏。

 

今後はバイブス爆卍(まんじ)小学生としてその本分を全うしようと思う。